三菱ケミカルホールディングスTHE KAITEKI COMPANY

社長メッセージ

30年後の世界を見据える 長期志向経営 地球規模でWell-beingの実現をめざします 代表執行役社長 越智 仁

 社長の越智です。2018年3月期の業績は、コア営業利益が過去最高益の3,805億円(前期比約24%増)、ROEは17.8%に達し、2017年3月の年20円から32円への配当金増配をさせていただきました。市況の上昇という追い風もありますが、私自身は、2005年の三菱ケミカルホールディングス(MCHC)設立以来の不採算事業の撤退やM&Aによる構造改革がなければ、中期経営計画で掲げた2021年3月期の目標3,800億円を前倒しの達成はできなかったと考えています。

 一方、加速するテクノロジーの進化に乗り遅れずに、世界経済が低成長であっても持続可能な成長ができる会社になるためには、乗り越えるべき課題は山積みで、最高益で安心している余裕はまったくありません。弛むことなく、2021年3月期のコア営業利益4,300億円を視野に入れて、その達成をめざし全力を尽くしてまいります。

中長期の企業価値向上に向け、さらに強い持株会社をめざします

 私は、MCHCの社長に就任して4年たちましたが、この4月に三菱ケミカル(MCC)の社長との兼務を解消し、MCHCの社長に専念することになりました。中長期的なグループ全体の企業価値向上を考えていくMCHCの社長と、日々のビジネスを推進する事業会社の社長の兼務には、私自身、課題認識をもっていましたが、MCCの経営が軌道に乗り、これからは、MCHCの持株会社としての機能を強化すべき時期に来たとの判断から、兼務を見直すことにしました。

 実際に、まだ数カ月ですが、私の時間の使い方は大きく変わってきています。兼務時には、事業会社の社長として、日々の事業の執行のために時間を使っていましたが、現在は、中長期的な経営戦略や施策について考えることに時間を投下しています。グループ全体の企業価値向上という点では、理想の姿に一歩近づいたのではないかと思います。

 私たちがめざしているのは、強い持株会社です。一般に、持株会社の役割は、最適な事業ポートフォリオの構築、IR、財務、コーポレートガバナンスなどに限定されることが多いかと思います。2005年のMCHC発足時は、当社でも同様で、持株会社として強い戦略的方針を打ち出すことができませんでした。その後、2017年までに、約6,000億円の事業の売却・撤退、1兆4,500億円規模の事業の取り込みなど、持株会社であるMCHCの意志としてさまざまな改革を進めてきました。化学、産業ガス、医薬、ライフサイエンスの事業もそれぞれ一定の規模に成長し、コア営業利益は、2006年3月期の約1,300億円から2018年3月期には約3,800億円に拡大、2017年4月には改革の仕上げへの布石として、化学系3事業会社を統合し、三菱ケミカル株式会社を設立しました。このように、当社の経営ステージが変わり、世の中のデジタル技術、科学技術の進化が加速する中で、ますます、持株会社と事業会社それぞれの役割が大きく変わるときが来たと考えています。

 具体的には、これまで、事業会社が3-7年の時間軸での自社を中心とした戦略を考え、MCHCはそれをまとめて全体の方向性を作り上げるという役割分担でしたが、これを、MCHCが10-15年先をしっかり見据えたうえで、グループの方向性を決めて、戦略の基本的な骨格を構築し、それに基づき事業会社が3-7年の戦略を考え、きっちりと執行していく体制に変更していきます。そのために、MCHCに経営戦略を考えるシンクタンク的な機能とイノベーションを担う先端技術・事業開発室を2017年に設立しました。

KAITEKI経営は第3ステージへ

 持続的な成長をめざしたKAITEKI経営は、第3ステージに入りました。KAITEKI経営の原点、第1ステージは、2006年にスタートしたプロジェクト10/20です。20年後の世界を想定しながら、10年後どうあるべきかを考え、自分たちが化学会社として世の中でどのような役割を担うのかを問いかけながら経営していく試みでした。サステナブルデベロップメントに資する7事業を掲げ、展開しました。

 第2ステージは、リーマンショックの頃からです。当時は、「CSRとは、本業を通じてサステナブルデベロップメントを実現すること」という認識でした。“カイテキ”は、日本語では“快適”、英語圏では“Comfortable”ですが、もう少し広く、企業と社会の共通価値(CSV:Creating Shared Value)を捉えるべきではないかと考え、“KAITEKI”という文字遣いにその意味を込めるべく、この表現としました。また、会社の価値をどのように生み出しているのかを理解してもらうためにKAITEKI経営の3つの軸(MOE: Management of Economics, MOT: Management of Technology, MOS: Management of Sustainability)を提示して、浸透を図りました。

 そして、現在は、第3ステージに入りました。2015年の国連のSDGsの提言により、社会が解決すべき問題も気候、水、食糧から、貧困、差別、教育などを含む範囲まで、広がりました。当社では、以前からステークホルダーにとっての重要度と自社にとっての重要度をマトリクスで考えるマテリアリティ・アセスメントを活用していましたが、企業の活動とSDGsのつながりをより深く考えるべきステージに来たと考え、KAITEKIを大きく捉え直すことにしました。そしてめざすべきKAITEKIを「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」と再定義しました。健康まで含めた心地よさ(Well-being)を、会社、社会だけでなく、人や地球規模で実現するという意思を込めています。
※Sustainable Development Goals

未来に向けた布石を打っていきます

 当社の経営は長期志向です。20-30年後を考え見据えながら、我々にとっての次世代テーマは何かを考える地球快適化インスティテュート(TKI)を2009年に設立しました。TKIの長期視点を短中期の事業戦略にどのように活かしていくのかが課題でしたが、先端技術・事業開発室を設置するなどMCHCの戦略機能を強化することで、TKIが20-30年を見通し、MCHCが5-20年のイノベーションの実現手法を考え、事業会社が3-7年の計画を立てて実行していくという形が出来上がってきました。

 デジタルトランスフォーメーションについては、CDO(Chief Digital Officer)を外部から招聘し、MCHCグループには何が必要かを広く考え始めました。チームは、外部と内部の混成メンバーで、多様な視点からデジタルシフトを浸透させていきます。70-80件のテーマがありますが、まず、10件ほどの仮説・検証のプロジェクトを進め、実行に移していきます。若手を中心にデジタルイノベーションについてのナレッジを共有、実践に活かすことで人材の育成もしています。

 サーキュラーエコノミーもMCHCグループの重要なテーマです。近年、マイクロプラスチックなどの海洋汚染の問題が広がっており、まだゴミの回収システムが構築されていない開発途上国地域の沿岸などで深刻です。これまでにも産業界にはリサイクル・リユースという活動はありましたが、より本質的な循環社会の仕組みをつくっていくことが、材料メーカーの責任であり、また成長の機会でもあると考えています。

組織と個人の「健康経営」を推進します

 KAITEKI経営の重要な施策の一つが、健康経営です。健康支援と働き方改革を業務効率化と生産性向上に結びつけ、イノベーション力と事業競争力の強化を通じて収益力を大きく向上させます。

 ここ数年の従業員の意識調査などを通じて、健康促進と職場のコミュニケーションの改善は、個人の能力・満足度の向上、さらに組織が活性化し、創造性が上がってくることも分かってきました。世の中の働き方改革では、時間外労働が注目されがちです。当社では、もちろん労働時間はモニターしますが、KPIとしては、いきいき活力指数、健康指数、働き方指数の独自指数を設定しています。

 人材育成とコミュニケーションを強化するために、オフィス環境や福利厚生施設などにも投資をしていきます。人材への投資は、財務諸表上は費用になりますが、コミュニケーションの活性化、健康の改善、経験の共有を通じて、人が成長すれば、必ず成果が出る投資だと思っています。

安全とコンプライアンスは企業のすべての基盤です

 安全とコンプライアンスは企業のすべての基盤であり、それを疎かにすると、企業の存続そのものが根底から揺らいでしまいます。安全については、2007年の当時三菱化学鹿島事業所での事故など、過去の経験を決して風化させません。古くなってきた設備については、適切なメンテナンス投資と最新の技術を活かした事故防止策を進めています。

 コンプライアンスは、欧州の個人情報保護規則、中国の環境規制など、刻一刻と変わっていくので、絶えず、世界の情勢をモニタリングして、対応していきます。自分たちだけで考えて、実践するだけでは不十分で、世の中のニーズを把握して、世界の基準を守ることを怠ってはなりません。守ればよいということだけではなく、想像力をもって対応します。

中長期の企業価値向上にコミットします

私が初めてIR活動に関わったのは2008年です。経営戦略室にいた私は当時の小林喜光社長に随行し、海外投資家を訪問しましたが、そのときは、石油化学をはじめとした事業の低収益性、“総合”化学の事業の分かりにくさなどの質問を多く受けました。昨今では、現行の中期経営計画のもと、当社がこの時代をどのように勝ち抜き、自らの力でどのように成長を生み出すかを正面から問い掛ける、本質的な質問が増えています。当社が実践してきた構造改革と、収益の安定化・改善が評価されてきたことに加えて、投資家の中でもESGやSDGsに対する関心が高くなってきていることを感じます。我々は、今後もステークホルダーの皆さまとの対話を重視し、中長期企業価値向上のための施策に取り組み、会社を成長させることにより、皆さまのご負託にお応えしていきたいと考えていますので、引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。

代表執行役社長 越智 仁

ページ上へ