三菱ケミカルホールディングス

THE KAITEKI COMPANY

社長メッセージ

三菱ケミカルホールディングスグループは、人・社会・地球の課題解決を通じて世界の持続可能性向上に貢献することで自らも持続的に成長する真にグローバルな「THE KAITEKI COMPANY」をめざします。

グループの多様なリソースを強みにつなげ、激変する時代のなかで成長を果たしていきます。

当社設立10年目の区切りの年に社長に就任してから1年が経過しました。設立10年間は、リーマンショックや東日本大震災など数々の厳しい状況に直面してきましたが、この1年間もそれに違わず、経営環境の変化の速さと複雑さがさらに増しているというのが、私の率直な認識です。また、世界経済全体を見渡し、今後の中長期を展望すると、もはやこれまでのような経済成長が見込めないという認識に立つべきだと考えています。すなわち、「新常態」と言われる中国経済のみならず、米国や欧州などの先進国を含めて、基本的に世界は低成長の時代に入ったという理解のもと、この時代をどう勝ち抜いていくかという見地に立った経営を行う必要があると認識しています。このスピード、複雑さ、低成長に象徴される不確かで変動性が増した経営環境下においても持続的に成長していくために、当社グループが実践してきたポートフォリオ改革と、その方向性を示したビジョン「KAITEKI実現※1」は大きな強みになるものと考えております。当社設立当初の事業構造は、石化事業に代表されるような事業環境に左右されやすく、収益の変動性が大きい事業の占める割合が大きく、この収益の変動性をいかに抑え、安定的な事業構造を確立するかが経営課題でした。この課題に対して、中期経営計画に基づき、事業撤退、M&Aなどを通じてポートフォリオ改革に正面から取り組んできた結果、安定的な収益基盤の厚みを増せたことに加え、今後も果断に事業構造転換を続けるための組織風土を醸成することができたと感じています。

また、変化に対して即応することだけでなく、「KAITEKI実現」というビジョンを掲げ、持続的成長を通じて中長期的な企業価値の向上につながるという視座を有していること、そして、そのビジョンに基づき従業員の価値観の共有を図ってきたことも大きな優位性につながるはずです。当社グループは、技術力で人・社会・地球の課題解決を通じて持続的発展の向上に貢献することで自らも持続的に成長する「THE KAITEKI COMPANY」をめざした経営を実践しており、これをさらに深化させる考えです。

※1 KAITEKIとは
時を越え、世代を超え、人と社会、そして地球の心地よさが続く状態を表すMCHCが提唱しているコンセプトです。

前中期経営計画APTSIS 15の総括
構造改革の断行により、企業規模の拡大、収益基盤の強化を図り、将来を見据えた布石を打ってきました。

2015年度は、KAITEKI実現に向け、ポートフォリオ改革による着実な実績を積み上げ、さらなる強みの醸成を図ってきた5か年の中期経営計画APTSIS 15の最終年度でありました。ポリエステルフィルム、炭素繊維などの機能商品分野における高機能・高付加価値事業の強化ならびに不採算事業の再編・再構築の推進に加え、2013年に医薬品・健康食品用カプセルの製造販売などを行うクオリカプス株式会社、2014年に産業ガスおよび関連機器・装置の製造・販売を行う大陽日酸を統合するなどの収益基盤の拡大・強化により、事業ポートフォリオ改革を推進しました。

また、これらの改革と並行して、徹底したコスト削減、資産圧縮などの諸施策にグループを挙げて取り組んだ結果、2015年度連結業績は、売上高3兆8,230億円(前期比1,668億円増(+4.5%))、利益面では営業利益2,800億円(同1,143億円増(+69.0%))、経常利益2,706億円(同1,075億円増(+65.9%))となりました。これにより、APTSIS 15の最終年度の数値目標に対して、営業利益については目標を達成することが出来ました。ROAおよびネットD/Eレシオは、APTSIS 15初年度である2011年度比では改善したものの、買収などによる総資産および有利子負債の増加や構造改革の推進に伴う特別損失の計上などにより、最終目標には未達となりました。海外売上高比率は、グローバル展開の加速などにより2011年度比では6.5%向上しました。産業ガスに代表される安定的な事業が加わり収益基盤を強化しつつ、企業規模を世界で戦えるレベルにまで拡大させ、営業利益ベースでMCHC設立以来最高益を達成したことは、今後につながる成果と考えております。

次に「KAITEKI経営」の3つの経営基軸のうち、収益以外の基軸と位置づけているイノベーション追求(MOT: Management of Technology)とサステナビリティ向上(MOS : Management of Sustainability)の観点からAPTSIS 15を振り返りたいと思います。まず、MOTにおいては、次代を担う創造事業の早期収益化を最重要課題として取り組んでまいりました。全体的には必ずしも当初期待した通りの進捗が得られなかったものの、オープンイノベーションの推進をはじめ、ヘルスケアソリューション事業の加速にもつながる生命科学インスティテュートの設立など、今後の成長の推進力となる実績を残せました。

MOSは、企業を取り巻く社会環境および企業に対する要請が大きく変化していくなかで、ますます経営にとって重要になってきたと考えています。CO2の削減や省資源・省エネルギーなどサステナビリティへの貢献度を指標化してその進捗を定量評価するという我々の取り組みは、個別の課題はあるものの当初目標を概ね達成しました。APTSIS 15期間中を通じて培った蓄積により、今後、本指標と企業価値との結びつきをさらに高めていきたいと思います。

目下の課題と、新中期経営計画APTSIS 20の基本方針と重点施策
基本方針: 収益力の強化を通じたさらなる成長と資本の効率性の追求

前中期経営計画の最終年度において営業利益が過去最高益となった一方で、未達に終わったROAおよびネットD/Eレシオなどの数値目標に象徴されるように新中期経営計画APTSIS 20に引き継ぐ課題も少なくありません。その中で、収益力の強化を通じたさらなる成長と資本の効率性の追求が、社長の職務を担う私の最大の使命だと認識しています。社長就任からのこの1年、経営メンバーと議論を重ね、APTSIS 20を策定してまいりました。私の最初の大きな責務は、注力すべき課題や重点分野を特定し、実効性の高い経営計画の策定を指揮することにありました。

目下の課題と対応策を有機的に結びつけて練り上げたAPTSIS 20の概要について、数値目標と併せて裏づけとなる重点施策を中心にご説明したいと思います。

当社は2016年度より会計基準をIFRS(指定国際会計基準)に移行することに伴い、APTSIS 20の財務目標として、従来の日本基準での営業利益に相当するコア営業利益※2という新たな指標において3,800億円をめざします。また、資本効率の向上を明示するため、ROEを目標指標に加え、これを10%以上に高めます。

※2 コア営業利益
IFRS移行に伴い導入する段階損益。IFRS基準の営業利益から非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いた経常的な収益を示します。

重点施策: 化学系3事業会社の統合と、グループ・グローバル経営の深化、機能商品群の成長加速で、
高成長・高収益型の企業グループへ。

化学系3事業会社の統合

事業間のシナジー(協奏)の最大化や、不採算事業(テレフタル酸インド・中国事業の株式譲渡を決定(2016年7月))と低収益事業の抜本的な対策、生産性向上によるコスト競争力の強化などを加速的に進めるため、2017年4月に三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの化学系3社の統合を決定しました。これにより3社の経営資源を最大限に活用する体制となります。私は、この統合をAPTSIS 20の最重要課題と位置づけています。統合効果を最大限に発揮するために化学系3社で60近くあった戦略的ビジネスユニット(SBU)を、新生三菱ケミカル株式会社では高機能ポリマー、高機能化学、石化、新エネルギーなど10の新しい事業部門に再編成します。これにより狭い範囲で短期的に捉えがちであった事業戦略やマーケティングを、より広い視野で、かつ中期的な観点で俯瞰して策定・実行することが可能となります。また従来不十分であった5年から15年先を見据えた中期のR&Dにつなげることで次なる成長ドライバーになる製品の開発力を高めていきます。さらに、従来の事業部門単位での規模では難しかった中規模のM&Aも可能となり、既存事業を補完し収益性を高めるための案件を進めやすくする狙いもあります。

これによりたとえば、三菱レイヨンの炭素繊維を、2017年度より同じ事業部門に属することになる三菱樹脂傘下のQuadrant AGが持つ欧州自動車市場向けの高機能エンジニアリングプラスチックの販売チャネルを通じて拡販するといったことができやすくなり、より総合力を発揮しやすい体制になります。現在、グループ内でのシナジー(協奏)を、文字通りインテグレーション(統合)に昇華させるべく、3社統合の先を見据えた中期的な成長戦略を新事業部門単位で策定中です。

グループ・グローバル経営の深化

海外での収益性強化も大きな課題と認識しています。私は、社長就任時に、真にグローバルな「THE KAITEKI COMPANY」をめざすことを標榜しましたが、APTSIS 20でのあるべき姿にもこれを据え、グローバルオペレーションを深化させます。

事業環境がすさまじい速度で変化する今、これまでのように、日本(本社)から事業ラインを通じてグローバル各地域のオペレーションを指揮監督する事業運営は限界にきています。そこで、化学系3社の統合を機に、日本以外の拠点を、中国、アジア、欧州、米州のエリアに分け、それぞれの地域統括機能を新社・三菱ケミカルに設置する準備を進めています。また、傘下のグループ会社も集約し運営を効率化するとともに、グループガバナンスを強化します。

これらの施策により、事業軸の縦のラインに、地域軸の横のラインが加わり、各事業の自律的なエリアマネジメントと、グループ全体のグローバルマネジメントを両立させていくことで、ダイバーシティに富んだ経営の深化につなげていきます。

上記以外では、田辺三菱製薬による、世界最大の医薬品市場である米国における事業基盤の確立、大陽日酸による海外事業の拡大も急務と認識しており、いずれもスピード感をもって展開してまいります。これらの取り組みを通じて、各地域のネットワーク(技術、情報、商流)を最大限活用し、海外売上高比率を50%以上に高め、海外の収益力強化を図ってまいります。

機能商品分野の成長を図る

APTSIS 20の課題である収益力の強化のため、3事業分野の均衡ある発展と成長を図ってまいりますが、APTSIS 20では、特に機能商品分野の伸長に傾注します。機能商品群は、市況に左右される汎用品ではなく、売上高が数百億円規模ぐらいまでの付加価値の高い高機能商品を数多く積み上げて収益性を上げていきます。そのためには、先に述べました化学系3社の統合を梃に、経営資源を最大限活用し、イノベーションを強化するとともに、高機能・高付加価値製品の開発と収益拡大、そしてグローバル展開の加速を図ってまいります。

素材分野では、引き続き基礎石化製品などのコスト競争強化を徹底的に図るとともに、MMA、産業ガスなどのグローバル展開を加速してまいります。

ヘルスケア分野では、オープンイノベーションの活用などにより創薬力を強化するとともに、米国を中心とした海外事業の展開を推進します。また、ビッグデータ・ICTを活用した健康・医療ビジネスの早期収益化を図ります。

成長の加速に向けて

事業環境の変化のスピードに合わせて、当社の施策の実行スピードを上げるためには、従来の業務スタイルを革新する必要があります。鍵を握るのはITの活用で、グループ内のシステム統合、意思決定支援システムの高度化など目先の課題もさることながら、IoTやAI (人工知能)といった領域での技術革新を、これまでご説明申し上げた主要施策にいかに有機的に取り込んでいくかが重要です。特にヘルスケア分野や機能商品分野への活用を現在検討中です。そのためには、従来の企業内でのIT活用とは別次元の発想を有し、これら技術を使いこなす人材育成・獲得が急務であることから、本件を担当するプロジェクトチームを立ち上げました。

資源配分の重点化

APTSIS 20における資源配分は、成長投資として1兆円を重点配分し、R&Dには7,000億円を充てます。分野別では機能商品分野とヘルスケア分野への資源配分の比率をAPTSIS 15より高めることにより、これまで説明してきた主要施策の実効性を高め、強化していきます。

一人ひとりが大切にすること̶保安・安全、コンプライアンス、自らの健康

APTSIS 20では、成長を加速させ、収益を高めるための諸施策をスピードをもって実行してまいりますが、いかなる企業経営を行っていくにしても、保安・安全、コンプライアンスの徹底が当社グループの企業活動の根幹であることに変わりはありません。新しい経営計画、事業運営体制の節目に際し、一人ひとりの意識改革を改めて喚起していく所存です。また、保安事故の防止やメンタルヘルスケアの問題のみならず、一人ひとりの生産性向上という視点から、改めて従業員の活力を上げねばならないと感じています。これは、激変する環境にあって、変化を先読みできる発想力や柔軟で強靭な対応力を醸成するにあたっても不可欠な要素です。そこで今般、私は経営者として、従業員一人ひとりの健康増進に対して積極的な投資や支援を行い、個人の活性化を促すべく、「健康経営推進宣言」を行いました。具体的なアクションプランはさらに詰めている最中ですが、最終的には組織のみならず、社会の活性化に役立てたいと考えています。

株主還元
「成長事業への投資」、「株主還元の充実」、「財務体質の強化」の適切なバランスを維持し、企業価値の向上を図ります。

株主還元につきましては、成長事業への投資、財務体質の強化との適切なバランスを維持することによって、中期的な水準に応じて30%の配当性向を目安とし、安定的な配当も考慮して実施いたします。なお、この方針は、新しい会計基準(IFRS)に移行しても変わりません。前期の配当につきましては、通期で2円増配の15円とさせていただきました。次期配当については、1株につき中間配当8円、期末配当8円、通期16円を予定しています。

ステークホルダーの皆さまへ
KAITEKI実現に向け、対話、協働を通じた持続的な成長をめざします。

当社グループは、株主、お客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまとの対話を通じて、KAITEKI実現に向け、課題や目標を共有し、協働することをめざしています。今般、APTSIS 20の策定にあたっては、将来のマクロトレンドを踏まえ、ステークホルダーの皆さまの視点を反映して実施したマテリアリティ・アセスメントの結果を、経営戦略の指針として活用しています。国連の持続可能な開発目標(SDGs)でも提起された気候変動や水資源、食料問題などのグローバル・アジェンダへの対応や、健康に関する諸課題など、当社グループとして取り組むべき重要課題を特定しています。また、APTSIS 20は、社内のみならず、社外取締役を交えた闊達な議論を経て策定されており、外部の視点も積極的に取り入れています。

今後も、KAITEKI実現というビジョンのもと、ステークホルダーの皆さまとの積極的かつ建設的な対話、協働を通じて、人・社会・地球の課題解決と世界の持続可能な発展に貢献を果たしながら持続的な成長をめざしてまいります。 ステークホルダーの皆さまにおかれましては、変わらぬご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

代表執行役社長 越智 仁

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