CFOメッセージ

一層の資産効率の向上と
財務基盤再強化 “refortifying” を図り、
KAITEKI価値=企業価値を高めていきます

執行役常務
Chief Financial Officer

伊達 英文

足元の厳しい状況を見据え、2020年度はさらなる財務基盤の強化を

現中期経営計画 APTSIS 20において、私はCFO就任以来、効率的な利益創出を図っていくためのROE向上とROIC経営の徹底に注力してきました。

資産効率性が低く、5%付近だったROEを改善するため、事業部単位のバランスシート経営を導入して部門ごとの投下資本を可視化、ROICツリーを浸透させるなど、各部門が収益率重視かつ機動的に経営できる体制を整備しました。また、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の短縮化やキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)の欧米日亜4極体制の確立、定期的な保有意義の検証を通じた資産売却の進展などを通し、計画開始から3年で当初の5年間の目標である3,000億円を上回る約4,500億円の資産効率化を達成しました。その結果、2016年度以降は10%を超えるROEを実現する体制を構築できました。

しかしながら2019年度は、米中貿易摩擦の影響や新型コロナウイルス感染症の影響などによりコア営業利益が1,948億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は541億円となりました。2020年度も引き続き厳しい環境が継続しており、中期経営計画のKPI達成は難しい状況です。

ネットD/Eレシオは田辺三菱製薬の完全子会社化により2020年3月末で1.79倍に膨らんでいますが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う財務状況の変動などに機敏かつ柔軟に対応しつつ、できるだけ早期に1.0以下に改善するよう引き続き努めていきます。

連結財務指標の推移

グラフ:「親会社所有者帰属持分比率」2015年度23.0%、2016年度24.5%、2017年度27.3%、2018年度24.7%、2019年度22.8%、2020年度中計目標29%
                      「ROE」2015年度5.2%、2016年度15.1%、2017年度17.8%、2018年度12.7%、2019年度4.2%、2020年度中計目標13%
                      「ネットD/Eレシオ」2015年度1.17倍、2016年度1.06倍、2017年度0.89倍、2018年度1.26倍、2019年度1.79倍、2020年度中計目標1.0倍

資産の効率化への取り組み

2020年度目標約89日(10%改善)。キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)の欧米日亜4極体制の確立。定期的な保有意義の検証を通じた、保有意義の低下した資産の売却。

取り組むべき社会課題を考慮しつつ、リスクとリターンの両方を視野にポートフォリオ経営を推進

2021年度以降の再浮上に向けて、可能な限り営業キャッシュ・フローを積み上げ早期に成長路線に乗せたいと考えており、そのためには資本効率の一層の強化が重要です。2017年度から当社は、事業会社に大幅な権限を委譲した体制をグローバルに構築しました。分野別の管理指標(売上収益成長率、ROS、ROIC)を参考にしながら各地域に合ったスピーディな意思決定を実践しており、技術の優位性やビジネスモデルの有効性も勘案したポートフォリオマネジメントを継続的に強化しています。

また、持株会社として、MCHCグループの価値向上を実現するために、M&A後のPMI※も重要視しています。思い描いていたシナジーが出ているかどうか、PMIの成果をレビュー会議を実施して確認し続けています。化学系3社を統合した三菱ケミカル発足による統合効果は、2019年度までの3年間で協奏・成長の事業シナジー発現が138億円、合理化が179億円に達しました。

欧州企業の事業買収をした産業ガスにおいてはグローバル4極体制(日本、米国、欧州、アジア・オセアニア)を構築しましたが、各地域を統括する拠点に権限を移譲するなど、さらなる飛躍に向けてグループ運営体制の強化を進めています。

今後のポートフォリオ経営は、中長期経営基本戦略「KAITEKI Vision 30(KV30)」を踏まえたものになります。その際に必要なのは、リスクコントロールに加えて、成長の可能性をさまざまな観点から検証するリターンコントロールの考え方です。

これまでも当社は、ROICが加重平均資本コスト(WACC)を下回るような低収益事業を明確に見直しの対象にしてきました。しかし今後は、たとえ収益率が維持されていても、業界全体のポジションや当社が保有する技術のポートフォリオ、シナジー創出体制など、無形資産も含めた幅広い視点で将来の成長性や効率性を検証しつつ、事業の再編・再構築を議論していきます。その中にはKAITEKI経営やKV30で示すような、MCHCグループとして解決に貢献すべき社会課題・事業領域に係るリスクとリターンの議論も含まれます。

PMI:ポスト・マージャー・インテグレーション M&A後の統合プロセスを指し、経営統合、業務統合、意識統合の3段階からなる。

資源配分と株主還元方針

資源配分については、基本的には現在の中期経営計画を発表した2015年当時の考え方から変わっていません。成長事業への投資、株主還元の充実、財務体質の強化に等分に力点を置き、適切なバランスを維持していきます。

私は常々、アカウンタビリティが高まれば会社の資本コストは低くなると考えており、財務および非財務情報に関する具体的な施策を適宜適切に説明していくことが役割だと考えています。その結果、近年では世界的な社会的責任投資指標に採用されるなど、評価いただいております。

一方で、先行き不透明な時代の中で説明責任を果たし続けていくことの難しさも実感しています。2020年度はwithコロナの状況を踏まえたポートフォリオマネジメントを最優先課題とし、成長投資においても緊急性のない案件の見直しや経費削減に注力していきます。

株主配当については、成長投資、財務体質の強化と適切なバランスを維持しつつ、中期的な利益水準の30%を連結配当性向の目安とし、安定的な配当も考慮に入れています。

その中で、誠に遺憾ながら足元の状況および今後の事業展開などを総合的に勘案し、2019年度の1株当たり期末配当は、当初予定の20円から12円に、2020年度の配当は通期24円とさせていただくこととしました。

今後もCFOとしてなすべきことを着実に実践し、株主はじめステークホルダーの皆さまへの説明責任を果たしつつ、企業リスクを下げ、資本コストの低減を通じた企業価値の向上に取り組んでまいります。

株主還元

グラフ:「1株当たり配当金」2015年度15円、2016年度20円、2017年度32円、2018年度40円、2019年度32円、2020年度期初予想24円「基本的1株当たり当期利益」2015年度31.7円、2016年度106.7円、2017年度147.1円、2018年度119.2円、2019年度38.1円、2020年度期初予想34.5円

2020年10月(「KAITEKIレポート2020」掲載)

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