KAITEKI FUTURE LAB.

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PROLOGUE

人、社会、そして地球の心地よさが
ずっと続いていく
ーKAITEKIの実現をめざす

三菱ケミカルホールディングス 代表執行役社長・越智仁 ×『WIRED』日本版 編集長・松島倫明対談

  • Dec 21st, 2020

  • TEXT BY SHOGO HAGIWARA

  • PHOTOGRAPHS BY SHINTARO YOSHIMATSU

人類のみならず、社会、地球をも包括した”Well-being”を持続的に実現する=「KAITEKIを実現する」という全地球的ミッションを、2011年より企業として先駆的に打ち出している三菱ケミカルホールディングス。2050年という未来からバックキャストし、いまから10年後となる2030年のありたい姿を明確にした中長期経営基本戦略「KAITEKI Vision 30」を新たに掲げた。同社代表執行役社長・越智仁のこのKAITEKI実現にかける想いを、これまでの振り返りとともに、『WIRED』日本版編集長・松島倫明が訊いた。

人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていく

ーKAITEKIの実現をめざす

CHAPTER 01

原点回帰を経てたどり着いた「サステナブル」

松島倫明(以下、松島)『WIRED』日本版で2019年末、「DEEP TECH FOR THE EARTH 地球のためのディープテック」という特集を組みました。地球環境の持続可能性という話になると、特に日本では得てして「自然に帰ろう」といった、「無垢なる自然に戻ればそれが正解なんだ」という議論が多く出てきます。しかしそれだけではなく、いまや環境危機と言われる状況において、サイエンスやケミストリーといった人間の英知も同時に使っていかない限り、こうした危機をストップできないのではないかという問題意識が特集の根幹にありました。

翻って、三菱ケミカルホールディングスが10年以上にわたってそうした思想をもち続け、さらに2020年2月には、2050年の未来像からバックキャストした「KAITEKI Vision 30」という2030年にありたい姿を明確にした中長期経営基本戦略を掲げられた。その先見の明があると思うのですが、改めて、どういう思いでKAITEKIのコンセプトにいたったのか、お訊かせください。

越智仁(以下、越智)バブル崩壊後、ITにより情報化社会が一気に進み、新たな価値観が生まれるなか、私たち化学産業は世の中に既存の価値を生み出してはいたけれど、新しい価値観というものをなかなか生みだせない状況に長らく直面しました。バブル崩壊から2006年くらいまでの約15年間は、非常に厳しい時期でした。そういう時代に、企業はどうやって生きていくべきかという原点に立ち戻ったのです。

「私たちが本当に求めるべきものは何か」「20年後にはどんな世界が来るのだろうか」という論議を1年という時間を費やして行ないました。その過程で、あらゆることを調べ上げ、今後想定される社会課題として地球温暖化、食料・水の偏在、高齢化といった問題が挙がってきました。そういったなかで「化学産業はどういうことをして生きていくのか」「三菱ケミカルホールディングスグループのミッションは何か」を自問し、熟慮を重ねたうえに出てきた答えが、「Sustainable Development(持続可能な開発)」でした。これは、ノルウェーの首相だった、グロ・ハーレム・ブルントラントさんが1987年に発表した報告書「Our Common Future」の中で語った重要な言葉で、このサステナブルという考えを、私たちの事業活動においても重視していかなくてはならないという結論に至りました。

松島化学産業といえば、産業革命以降、工業化が進んで、国家も世界も豊かになっていく流れをど真ん中で支えてきた産業です。それが、先ほどおっしゃったように、情報化社会が到来し、化学産業にとって少し厳しい時代となりました。そんななかで、アイデンティティのコアとなる部分を見つめ直したときに、化学の会社が、そこまで振り切って「サステナブルこそが価値だ」と言えるようになるまでには、相当踏み込んだ、本質的な議論をされたのだろうと感じます。

越智数々の議論を経て、KAITEKIの原型はできあがり、企業としてSustainable Developmentにどう取り組んでいくのか模索していたところで、2010年にリーマンショックが起き、私たちは、社会的存在意義なく利益追求するのみの企業はいとも簡単に淘汰されることを学びました。そして、リーマンショックを経て、私たちは、10年、20年先を見すえて社会に必要とされる企業とはどうあるべきかを考え抜き、「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと(Sustainable well-being)」をKAITEKIと定義し、事業を通じて社会にソリューションを提供していくことをミッションに掲げました。

人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていく

ーKAITEKIの実現をめざす

CHAPTER 02

有する資産をフル活用してイノベーションを起こす

松島「KAITEKI Vision 30」では、2050年にはカーボンニュートラルを実現して、食料や水の心配を一切ゼロにするという、本当に大きなビジョンを掲げられています。その通過点として2030年を見たとき、これからの10年で「これだけは成し遂げなければいけない」と注力されていることはありますか。

越智気候変動も食糧問題ももはやまったなしの状態で、2030年までに解決すればいいというものでは全くありません。足元から一つひとつアクションを起こし、積み上げて、イノベーションを加速していくということだと思います。三菱ケミカルホールディングスグループには非常に長い歴史がありますし、これまでさまざまな価値を生み出し、製造で培ってきたテクノロジーと膨大なデータが蓄積されています。そして、膨大なデータの下に数多くのプロセスや方法論があり、千差万別の手段があります。

さらに弊社は、日本だけで活動する企業グループではなく、海外売上収益比率が40%以上あり、世界各地の情報を共有しながら、欧州・米州・中国それぞれの地域ごとでタイムリーに意思決定するリージョナル化を推進してきました。そういった意味では、幅広いネットワークがありますし、バリューチェーン全体を通じてさまざまな産業や人々と接点をもっているわけです。この事実が生み出す力というのは、非常に大きい。これまでは、無数のリソースを軸にお客様のニーズを探索し、モノをつくることに注力してきましたが、これからは、モノをつくるだけでなく、社会の仕組みに入り込んで、ソリューションを提供していこうとしています。だから私たちがいま、そのために取り組んでいかなければならないのは、従業員一人ひとりが社会課題を自分ごととして捉え、創造力を働かせてアクションを起こしていくことです。

松島従業員一人ひとりが、ソリューションプロバイダーとしての役割を果たしていくということですね。

越智そういうことです。これができると何が起こってくるかというと、いままで培ってきた技術やデータといった財産を、社会変革を起こすためにフル活用できるようになります。それから、オープンイノベーションによって、新しい技術やアイデアをどんどん取り入れ、私たちのプラットフォームと融合することで、よりイノベーティブなものを生み出し、それにより収益力も強化され、社会課題の解決に向けて新たな資本や資源を多方面に投入できるようになると考えています。

人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていく

ーKAITEKIの実現をめざす

CHAPTER 03

デジタルの力が開発スピードを劇的にアップする

松島次に、御社の強みについて、ちょっと『WIRED』らしい視点から伺いたいと思います。いま、地球を環境危機から救うという文脈で人類に問われていることは、人間のために救うのか、それとも、地球の生態系のためなのかという点です。『WIRED』でも、テクノロジーを正しくソリューションとして使うことによって、地球を環境危機から救わなければいけないと考えているのですが、そのアプローチ自体が、例えば、20世紀までの人間の技術観や科学観と比較して進化があるのか、結構、大きな問題だと認識しています。要するに、人間のためになっているのか、本当に地球のためになっているのか、という大きな問いです。

その点、このKAITEKIという考え方では、“Sustainable well-being” の対象として、人、社会、そして地球も含まれています。ここに「地球」が入っているという事実は、ある種、人間中心主義的な考えのもうひとつ上のメタレベルから俯瞰されているという証拠であり、私は非常に感銘を受けました。

越智非常に重要な観点だと考えています。結局、20世紀の生産活動は、常に一方通行なものでした。常に新しい材料を投入して何かをつくる。つくったものは使い終わったら廃棄されていくという世界のなかに、利便性を求めて、ずっとやってきたわけです。しかし、実のところ、私たちはもっと合理化したかった。合理化というのは、消費するエネルギーを少なくしたかったということです。けれども、当時は、抜本的に変える方法論がまだ存在していませんでした。太陽光発電という例をひとつ取っても、太陽エネルギーを取り込んで、電気をつくり上げるということ自体は十数年前から始まりましたが、より効率的に発電し、より環境負荷を下げる技術が出てきたのは最近です。

ところがいま、その状況がデジタルの力によって大きく変わろうとしています。これまで人間が試行錯誤でやってきたことを、デジタル技術がものすごいスピードでやってしまう時代がきています。そして、それがさまざまな分野で活用されてきています。

松島デジタルによって、未来に実現しうるソリューションの可能性が拡がったわけですね。

越智そうです。デジタル技術の進展によって、たとえば、新しいものを開発するのに、いままで1年かかったものが、もっと短い期間でできるようになるわけです。量子コンピューティングができたら、この時間軸はもっと縮まります。また、新しいものをつくり上げる手段や、プロセスについても、いままで以上にいろんな可能性が出てきたわけです。これは社会システム全体を最適化するソリューションを創造していく上で非常に大きなことです。

人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていく

ーKAITEKIの実現をめざす

CHAPTER 04

現状の積み重ねではない、新たな未来

松島今回、企業ホームページ内に「KAITEKI FUTURE LAB.」を立ち上げられ、「KAITEKI Vision 30」でめざす未来像を提示されています。目線を上げて、大きなビジョンを掲げられることの意義、さらには「KAITEKI FUTURE LAB.」にどういった機能を果たしてほしいと思われているか、訊かせていただけますか。

越智この「KAITEKI FUTURE LAB.」が、2050年という未来を意識していただくきかっけになればと思います。「KAITEKI Vision 30」で描いた未来が実現するということを意識していただくのが重要です。それは、現状の積み重ねで描いた未来ではなく、新たな未来。現在の社会課題が解決された世界です。私たち三菱ケミカルホールディングスグループは、「KAITEKI Vision 30」で描いた構想の実現に向けて、グループ一丸となって動き始めました。皆さまと一緒に新たな未来を創っていけたらと思います。

※所属・役職は取材当時のものです。

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