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SOLUTION / VOL.04

「軽くて丈夫な素材」が環境に優しい未来をつくる
-炭素繊維複合材料

INTRODUCTION

「軽くて丈夫な素材」が環境に優しい未来をつくる
-炭素繊維複合材料

「軽くて丈夫な素材」が環境に優しい未来をつくる
-炭素繊維複合材料

  • Sep 21, 2021

  • TEXT BY YUYA OYAMADA

  • ILLUSTRAIONS BY SHINJI HAMANA

  • Technology

  • Health

  • Event

カーボンニュートラルの実現に向け、ビジネスモデルの大きな転換を迎えているモビリティ分野。自動車メーカー各社が電気自動車の普及に取り組んでいる中、注目を集めている素材があります。車体の軽量化に貢献する炭素繊維複合材料(CFRP)です。

「軽くて丈夫な素材」が環境に優しい未来をつくる
-炭素繊維複合材料

FEATURE

FEATURE

  • 01

    鉄より強く、アルミより軽い

    炭素繊維は鉄より強く、アルミよりも軽い材料です。三菱ケミカルホールディングス(MCHC)グループでは、PAN系炭素繊維とPitch系炭素繊維の2種類を製造し、双方の特性を活かしながら、自動車、航空機、人工衛星、風力発電、ゴルフシャフトなど、さまざまな用途やニーズに応じて成形・加工し、提供しています。

  • 02

    モビリティ軽量化がCO₂削減に貢献する

    航空機や自動車などの材料を従来のものからCFRPに置き換えることによって大幅な軽量化を実現。軽量化によって燃費が向上し、炭素繊維製造時のCO₂排出量をはるかに上回るCO₂削減効果を得ることができると期待されています。

  • 03

    循環型社会の実現に向け、
    原料から加工品の製造、リサイクルまで

    MCHCグループでは、炭素繊維の原料の製造からリサイクルにいたるまで自社で行っています。ビジネスの川上から川下まで一貫したサプライチェーンを保有する強みを活かし、多様なニーズに応える最適なソリューションを提供するとともに、資源循環の推進に貢献しています。

「軽くて丈夫な素材」が環境に優しい未来をつくる
-炭素繊維複合材料

DETAIL

DETAIL

炭素繊維の一番の特徴は、軽量かつ高強度な点にあります。 鉄の約1/4という比重でありながら、強度と弾性率に優れています。

MCHCグループの三菱ケミカルでは、世界で唯一、2種類の炭素繊維を製造してきました。アクリルニトリルを原料としたPAN系炭素繊維と、石炭を精製する際に発生するピッチコークスを原料とするPitch系炭素繊維です。

三菱ケミカルは炭素繊維の原料から、炭素繊維そのもの、中間材、CFRPまで自社で製造・販売しているところに強みがあり、材料設計、成形・加工技術など、炭素繊維に関する多種多様なノウハウと提案力を培ってきました。PAN系・Pitch系という2種類の炭素繊維を扱っていることもあり、自動車、航空・宇宙、ゴルフシャフトをはじめとしたスポーツ・レジャー用品など、多種多様な用途やニーズに応えるCFRPを提供しています。

従来の自動車には鉄やアルミなど金属部品が多く使われています。しかし、燃費規制やCO₂排出規制の強化を背景に、自動車業界では車体の軽量化が大きな課題の一つともなってきました。

また、カーボンニュートラルの実現に向け、ガソリン車から電気自動車へのシフトが加速する中、重いバッテリーを搭載する電気自動車が走行距離を延ばすには、ガソリン車以上に車体の軽量化が必須とされています。

そこでカギを握るのがCFRPです。従来の材料をCFRPに置き換えることによって強度を保ちながら車体の軽量化が可能となります。過去のモデル検討では、CFRPを17%適用すると30%の車体軽量化につながり(従来材料比)、車体軽量化によって10年間で1台あたり約5tのCO₂削減効果があると報告されています。

CFRPは車体の軽量化に大きく貢献すると期待されていますが、モビリティ分野への普及には課題もありました。従来の材料に比べて部材生産に時間がかかり、製造コストも高いことから、スポーツカーなど高級車での利用が主となっていたのです。

そこで三菱ケミカルでは、培ってきた部材の設計ノウハウを活かし、中量~大量生産に対応できるCFRPの開発に取り組んできました。その一つが炭素繊維FMC(CF-SMC=炭素繊維シート成形コンパウンド)です。

CF-SMCとは、カットした炭素繊維に熱硬化樹脂を含浸させたシート状の中間材料で、プレス成形による量産が可能なところに特徴があります。オートクレーブ(圧力釜)やオーブンを使った従来の成型方法に比べ、短時間で自動車部材に加工できるようになりました。オートクレーブ成形なら2時間かかるところを、なんと2~5分程度まで短縮したのです。

これにより部材をハイサイクルで量産することが可能となりました。コストを抑えても素材としてのパフォーマンスの高さは維持され、アルミと同程度の曲げ剛性(素材の曲がりにくさ)で比較した場合、約30%の軽量化も達成しました。将来的にはアルミと同等のレベルまで製造コストを削減できる可能性も秘めています。

また、CF-SMCは繊維の短い炭素繊維を使っていることから、設計の自由度も高く、複雑な形状の成形に対応できることも特徴としています。

すでにモビリティ分野でのCF-SMCの採用は進んでおり、日産「GTR」のディフューザー、レクサス「LC500」のドア・ラゲッジのインナー、トヨタ「プリウスPHV」のバックドアインナーのほか、最近でもトヨタ「GR ヤリス」のルーフなどに使われています。

今後、車体軽量化のニーズはさらに高まっていくと予想され、CFRPは需要増加が見込まれています。一方、自動運転車や空飛ぶ車など次世代モビリティの分野では、従来の思想にとらわれない新たなコンセプトによる車体設計が進むでしょう。

そうした新たなモビリティの実現に貢献するためにも、顧客ニーズの迅速な汲み取りが、よりいっそう重要となります。三菱ケミカルでは、素材を開発して提供する川上から川中までのビジネスから、エンドユーザーである自動車メーカーに近い川下のところに入り込んだビジネスへと変革すべく、サプライチェーンの強化に取り組んでいます。

2017年には、CFRPの自動車部品を手がけるイタリアのC.P.C.SRLに出資を行いました。同社が持つ設計・シミュレーション技術を活用した部品・車両の軽量化ノウハウや成形技術力、開発提案力、欧米自動車メーカーへのネットワークなどを活用することで、技術革新の著しいモビリティ分野に対して最適なソリューションをタイムリーに提供する体制を構築しています。

また、C.P.C社にCF-SMCの製造設備を新設することで、CFRP 製品に対する需要拡大にも対応していきます。中間材料についても、2020年にドイツの炭素繊維プリプレグメーカーであるc-m-p GmbHを買収し、CFRPの生産体制の強化をグローバルに進めています。

そして、競争力を維持していくには、サステイナビリティにも配慮したサプライチェーンの確立も不可欠です。そのため、三菱ケミカルでは日本の新菱(しんりょう)やドイツのcarboNXT GmbHなど、グループ会社において炭素繊維のリサイクル事業にも力を入れています。

現在は回収したCFRPから炭素繊維を分離し、原料として再利用する段階ですが、将来的には回収品をバージン材と同等の性能を残したまま中間材に再生する技術の確立を目標としています。三菱ケミカルは、炭素繊維の原料からリサイクルまで一貫したビジネスモデルをもつ唯一の企業として、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していきます。

炭素繊維という「軽くて丈夫」な素材は、モビリティ分野だけでも大きな可能性を秘めています。いよいよ電気自動車が主流となった時代が到来したとき、今よりもさらに軽く、さらに丈夫なCFRPが開発されていけば、環境に優しい「空飛ぶ電気自動車」だって夢ではないかもしれません。

三菱ケミカルの炭素繊維/炭素繊維複合材料専用サイト
https://www.m-chemical.co.jp/carbon-fiber/

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