株式会社三菱ケミカルホールディングス 社長 小林 喜光 新入社員歓迎式 メッセージ(要旨)

2014年04月01日 その他

株式会社三菱ケミカルホールディングス


【日本企業が直面している世界的な課題】

 グローバル化が進み、世界がボーダレスな「G無限大」とでもいうべき様相を呈する今日、国家間・企業間の競争はますます熾烈化し、変化のスピードは一層激しくなっている。また、中国の世界需給を無視した過剰生産は産業分野そのものを疲弊させ、さらに、製造業のデジタル化・モジュール化は、日本的な摺り合わせ・造り込みの強みを失わせつつある。
 一方、2060年には100億人程度にまで到達が見込まれる地球人口の激増によって、生物多様性の減少・気候変動の激化・窒素循環の失調など、地球はシステムとしての限界に達しつつあり、地球環境はSustainabilityの重大な危機を迎えている。
 
【日本企業の現状】

 アベノミクスの効果により過度な円高が是正されるなど、日本企業を取り巻く競争条件はある程度改善の兆しを見せているが、自前の原燃料を持たないという、資源とエネルギーのハンディキャップは決して克服できるものではない。また、日本の人口減少と高齢化は深刻であり、日本企業の競争力に大きな悪影響をもたらしつつある。
 
【当社の戦略】

 このような厳しい状況の下、当社は差異化とイノベーションを実現するため、「Sustainability【Green】」「Health」「Comfort」という3つの企業活動の判断基準(クライテリア)を定めており、このクライテリアに基づいて、経営資源を集中投入する事業を明確にしている。また、製品のライフサイクルに基づいた事業管理と、収益の変動性に基づいた事業管理を組み合わせ、事業環境の変化に即応できるようにしている。
 また、単なる「ものづくり」を超えて、関連するサービスにも踏み込んでトータルなソリューションを提供する「ものがたりづくり」を実現するため、オープンな社外アライアンスとクローズなブラックボックス化を戦略的に組み合わせ、シークェンス化する、「オープン・シェアード・ビジネス」(OSB)という独自のフレームワークも活用している。これにより、容易に模倣できないビジネスモデルをスピーディーに構築し、付加価値獲得競争を勝ち抜いていく。そのためにも、組織のサイロ化を打破し、組織間に横串を刺してシナジーを発現させるべく、ミッションコーディネーター制度を導入している。
 
【ヘルスケア新社・生命科学インスティテュートの発足】

 資源とエネルギーのハンディキャップに縛られない分野として、当社はヘルスケアソリューション事業を加速させる。情報を活用した未病段階での健康管理、各種先進医療、総合的な創薬サポートなどによって、健やかな高齢化の実現に貢献する。そのため、本日ヘルスケア新社の生命科学インスティテュートを発足させた。
 
【KAITEKI経営】

 企業の目的はまず利益を上げることであり、これは四半期単位のManagement of Economics (MOE)軸で表現できる。また、メーカーである以上、イノベーションを創出するためのManagement of Technology (MOT)も使命であるが、炭素繊維などの実例で明らかなように、これには最低でも10年はかかる。さらに、当社独自のコンセプトである、事業を通じて地球環境と人類社会に貢献するためのManagement of Sustainability (MOS)に至っては、実に百年の計が必要だ。このように、目的も時間軸も異なる3つの経営基軸が直交した三次元の経営空間において、3つの価値を合成したベクトルとしてのKAITEKI価値を追求することが、当社の経営理念である。
 そのため、MOS指標・MOT指標を構築して両者を定量化するとともに、財務情報と非財務情報をパッケージした統合レポートの「KAITEKIレポート」を発行するなど、KAITEKI経営を進展させている。
 
【新炭素社会の構築に向けて】

 省エネルギーによる温暖化ガス排出量の少ない社会づくりや、バイオマス・CO2など、化石資源ではない新しい炭素資源の活用は、「錬『炭素』術師」としての化学産業の役割である。産業革命以降の化石資源の大量消費によりバランスを崩した炭素の循環を適正な姿に回復させ、あるべき炭素の輪廻を実現した「新炭素社会」(Sustainable Carbon Society)の構築が、我々の究極の使命である。
 なお、私が会長を務める石油化学工業協会もそのPRキャンペーンにおいて、「循環炭素化学」というネーミングを決定したが、同様の産業としての使命感に基づくものと言える。
 
【グローバル・リーダーの人材像
――コンセプト・クリエーターとイノベーション・エンジニアリング・スペシャリスト】


 新入社員諸君には、社会に新たな独自の価値を築き上げていくことのできる「コンセプト・クリエーター」を目指してほしい。また、研究開発から製造、販売・ブランド戦略まで一貫して統率できる「イノベーション・エンジニアリング・スペシャリスト」も必要な人材像だ。
 また、特に日本人については、日本人ならではのアイデンティティを強みとして自覚しつつ、自己の存在そのものを問い詰める人間としての哲学をもって、欧米人に負けないタフな交渉能力を身につけてほしい。
 
【プロフェッショナルとして職業に全力を尽くす】

 私は社長就任以来、入社式では第35代アメリカ合衆国大統領J・F・ケネディの有名な言葉「国があなたのためになにをなし得るかではなく、あなたが国のためになにをなし得るかを問え」を贈り続けてきた。新入社員諸君には、「国」を「会社」に置き換えて、グループの一員としての責任を深く考えてほしい。
 また、ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーは、自己の職業に禁欲的なまでに深く没頭することを「Berufen」(天命)と表現した。新入社員諸君には、プロフェッショナルとして、天命としての職業に全力を尽くすことを求めたい。
 
【宿命に耐え、運命と戯れ、使命に生きる】

 新入社員諸君に「宿命に耐え、運命と戯れ、使命に生きる」という言葉を贈りたい。この世に生まれてきたことは宿命であり、自身でどうこうできるものではない。しかし、運命は自身で切り拓くことができるのだから、戯れるような部分も一部持ち合わせて生きてほしい。そして、生まれて生きている以上、徹底的に悩んだ末に、「自分の使命がなにか」を探しだしてほしい。
以上

[本件に関するお問い合わせ先]
株式会社三菱ケミカルホールディングス 広報・IR室
TEL 03-6748-7140

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